自己破産は以下の2つの条件さえ満たせば、基本的には誰でも利用できる手続き

「自己破産できるならしたいけど…厳しい条件があるんじゃ…?」

こんなお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

自己破産はすべての借金の返済義務がなくなるという非常に大きなメリットのある手続きです。それゆえ、条件の厳しさを気にしてしまうのも無理はありません。

しかし、自己破産というのは、条件さえ満たしていれば基本的には誰でも利用できる手続きです。というわけで、今回は自己破産の条件について詳しく解説していきます。特に細かな条件ではないので、自己破産の利用を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

自己破産は2つの条件を満たせば誰でもできる

自己破産は以下の2つの条件さえ満たせば、基本的には誰でも利用できる手続きです。

1.「支払い不能」と認められること
2.「免責不許可事由」に該当しないこと

詳しくは後述しますが、免責不許可事由とは、裁判所が借金の免除を判断する上で、免責が認められない事由のことです。すべて無制限に自己破産を認めていては悪用される恐れもあることから、免責を認める上での1つの基準のために免責不許可事由があります。

自己破産の条件1「支払い不能」と認められること

まず、自己破産を申し立てる上で一番の条件と言えるのが、「支払い不能」と裁判所に認められることです。具体的には、下記の内容を満たしている必要があります。

「支払い不能」は客観的に支払いができない状態のこと

「支払い不能」というのは、主観的な判断ではなく、客観的に見ても支払いができない状態を指します。本人が借金の支払いはこれ以上できないと考えていても、それが客観的に当てはまるとは限りません。「もう自分には自己破産しかない…」と感じていても、傍から見れば「まだまだ返済できるよね」、というのはそれほどめずらしいことではありません。

逆に、本人がまだまだ支払えると考えていても、客観的に見ればすでに破綻している、なんてこともあります。支払い不能の判断は自分で行えるものではないと覚えておきましょう。

収入がなくても「支払い不能」と認められない場合がある

支払い不能と聞いて、真っ先に思い浮かべるのは無収入ではないでしょうか?
確かに、無収入の方ではとても支払いができるものではありませんね。しかし。高額な預貯金を持っていたり、無担保の不動産を所持していたりなどする場合は、無収入=支払い不能といった判断がされないこともあります。また、逆に無収入でなかったとしても、返済額があまりに大きすぎる場合は、支払い不能と判断されることもあります。

このように、「支払い不能」の判定というのは一般の方が自ら行えるものではありません。どうしても専門知識が必須となってしまうことから、司法書士や弁護士といった借金問題のプロに判定してもらうようにしてください。

自己破産の条件2「免責不許可事由」に該当しないこと

自己破産を利用するためには、「免責不許可事由」に該当しないことも重要な条件の1つです。具体的な事情について下記にてさらに深堀してみましょう。

借金の原因やあなたの態度によっては自己破産できない

まず、前提として必ず覚えておきたいのが、借金の原因や破産者の態度によって、自己破産は認められないことがあるという点です。借金の原因については、以下で説明する免責不許可事由に該当している方は注意が必要となります。また、自己破産は手続きに中に裁判官と面接をする機会が最大で2回設けられています。裁判官は、破産者の態度もしっかりと判断材料にしているため、面接の際は誠実な態度で臨むようにしてください。

免責不許可事由は10つ

免責不許可事由については、主に以下の10項目となっています。いずれも破産法の条文通りの記載では理解が難しくなってしまうため、かみ砕いてご説明していきます。

1.不当に財産を減少させる行為
2.破産前にわざと借金をする行為
3.特定の債権者にだけ返済する行為
4.浪費または賭博といった射幸行為
5.嘘をついて借入する行為
6.保有資産に関する書類の偽造や隠蔽行為
7.虚偽の債権者名簿の提出
8.調査・協力義務に違反する行為
9.管財業務を妨害する行為
10.7年以内に免責決定を受けている

不当に財産を減少させる行為

自己破産の手続き前に、不当に財産を減少させる行為は免責不許可事由に該当します。たとえば、財産を隠したり、親族などに不当な価格で譲ったりするなどです。こうした行為は、債権者が破産手続きの中で受け取れる配当を減少させる行為であるため禁止されています。

破産前にわざと借金をする行為

もう自己破産するのがわかっているのに、わざと多額の借金をする行為も免責不許可事由に該当します。たとえば、自己破産の相談前に新たな借入先から借金をし、その後1度も返済していないケースなどは要注意です。

特定の債権者にだけ返済する行為

特定の債権者にだけ返済する行為を「偏波弁済」といって、こちらも免責不許可事由の1つです。破産手続きでは、すべての債権者を平等にしなければならないと定められています。よって、1社にだけ借金を返済することは禁止されています。これは、貸金業者だけに限らず、親族からの借入についても偏波弁済の対象となるので注意が必要です。

浪費または賭博といった射幸行為

浪費というのは、趣味による商品の購入やブランド物の購入、賭博というのは、パチンコやスロット、競馬といったギャンブルなどが該当します。その他にも、株やFX、ホストやキャバクラ通いというのも射幸行為に該当し、免責不許可事由となります。

嘘をついて借入をする行為

借金の完済が難しいとわかっていながら、返済と装って借入をする行為も免責不許可事由に該当します。たとえば、借入審査などの際に年収を偽って借入をするなどです。

保有資産に関する書類の偽造や隠蔽行為

保有資産に関する書類の偽造とは、個人の場合は確定申告書が該当します。確定申告書を偽造したり、財産を隠蔽し、意図的に記入しない等の行為は免責不許可事由です。給与所得者であるサラリーマンの方は、こちらの項目はあまり気にする必要はありません。

虚偽の債権者名簿の提出

自己破産は手続きの中で債権者一覧表を作成し、提出する必要があります。この債権者一覧表に意図して債権者を記載しないなどの行為は、免責不許可事由に該当します。たとえば、親族や友人から借り入れがあるにも関わらず、自己破産の事実を知られたくないために記載しない、といった行為は禁止されています。

調査・協力義務に違反する行為

自己破産の申し立てをすると、裁判所の裁判官や書記官とやり取りする機会もあります。その際、破産者には手続きを進める上で調査・協力が義務付けられます。この調査・協力義務に違反する行為があった場合も、免責不許可事由と判断されるため注意です。

管財業務を妨害する行為

上記と同様に、自己破産の申し立てをすると破産管財人が選任することがあります。その際、破産者には手続きを進める上で、破産管財人の業務に協力しなければならない義務が生じます。たとえば、破産管財人との面談、破産管財人の行う換価行為、その他すべての調査等といった業務を妨害してしまうと、免責不許可事由とされてしまいます。

7年以内に免責決定を受けている

自己破産に回数制限はありませんが、以前の免責決定(借金の返済義務がなくなること)から7年以内に再度の申立てをするとなると、免責不許可事由に該当します。

免責不許可事由に該当しても「裁量免責」の可能性がある

免責不許可事由は多岐に及ぶため、心当たりがある方もいたのではないでしょうか?
特に、浪費または賭博といった射幸行為については該当している方も多いのが現実です。

しかし、免責不許可事由に該当していたからといって、すべての方の自己破産を不許可にしてしまっていては、自己破産の目的の1つである多重債務者の再スタートを支援するといった意味合いが失われてしまいます。そこで、たとえ免責不許可事由に該当していたとしても、裁判官の権限で免責決定を出す「裁量免責」が採用されることがあります。この裁量免責は、通常の免責決定とまったく同様の効果となっています。

自己破産しても税金の支払いは免除されない


自己破産する上の注意点として、すべての支払いが免除されるわけではないという点です。
自己破産で免責の対象となるのは、あくまでも借金についてのみです。

「非免責債権」とは支払いが免除されない支払いのこと

自己破産をしても免責の対象外になる支払いを「非免責債権」といいます。たとえば、住民税や国民健康保険税といった税金の支払いについては免責の対象外です。

主な「非免責債権」は7つ

主な非免責債権は以下のものとなっています。以下の債権は自己破産をしても免責になることはありません。優先して支払うようにしましょう。

1.租税の請求権
2.破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
3.夫婦間の生活費や婚姻費用に基づく請求権
4.親族間の扶養義務等に基づく請求権
5.子どもの養育費等に基づく請求権
6.従業員の給与等雇用関係に基づく請求権
7.罰金等の請求権

租税の請求権

住民税や国民健康保険税、固定資産税や所得税など、税金に関わる支払いは原則的にはすべて非免責債権となっています。

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権とは、暴行などをして被害者に与えた肉体的・精神的損害に対する損害賠償金などのことです。「悪意で」というのは、法律用語の1つで、「事実を知っていること」を指します。たとえば、自分に管理権限がないのをわかっていながら会社のお金に手を出す行為は、悪意で加えた不法行為と言えます。

夫婦間の生活費や婚姻費用に基づく請求権

夫婦間の生活費や婚姻費用に基づく請求権も非免責債権です。たとえば、夫婦はたとえ別居中であっても、同等の生活水準が営めるよう双方は収支を調整しなければなりません。これがなされていなかった場合、夫婦の一方は不足分を婚姻費用として請求することが可能です。そして、この婚姻費用などの請求については、自己破産では免責になりません。

親族間の扶養義務に基づく請求権

親族間には扶養義務が生じているため、ある方が生活保護を申請すると、その親族に対して本当に扶養ができないのか?といった質問や調査が入ることがあります。こうした親族間の扶養義務に基づく請求権についても、自己破産では非免責債権として取り扱われます。

子どもの養育費に基づく請求権

子どもの養育費の支払いは、自己破産でも免責になることはありません。たとえば、夫婦が離婚をすると、子どもは一緒に生活をする監護親に引き取られるのが一般的です。そして非監護親は相応の金額を子どもに対して養育費として支払わなければなりません。こうした養育費の請求については、自己破産でも免責になることはありません。

従業員の給与等雇用関係に基づく請求権

破産者が個人事業主であり、従業員を雇っている場合、その従業員に対してすでに発生している給与の支払いについては、自己破産でも免責になることはありません。

罰金等の請求権

刑事罰の一種である罰金は、自己破産でも免責になることはありません。たとえば、道路交通法違反をした際の罰金などが一番身近な例でしょうか。

自己破産以外にも方法はある

借金問題の解決策というのは、自己破産だけではありません。債務整理には、自己破産以外にも「任意整理」や「個人再生」といった手続きがあり、いずれも借金の返済負担を軽減できる手続きです。もし、支払い不能状態と言えない方であっても、自己破産はできないと諦めるのではなく、他の手続きにて借金問題を解決させることができないか検討してみることが大事です。

まとめ

自己破産は、それほど条件の厳しい手続きではありません。しかし、条件の1つである「支払い不能」については、一般の方が個人の感覚で判断できることではなく、司法書士や弁護士といった専門家の目線がどうしても必要です。もちろん最終的な判断は裁判所が下すのですが、専門家が問題ないと判断したのであれば、まず間違いなく自己破産は可能と言えます。ただし、親族からの借入を隠したり、裁判所からの要請に非協力的だったりといった場合は、その限りではありません。借金に悩まされない毎日を手に入れるためにも、専門家や裁判所に隠し事をすることがないよう、真摯な態度で手続きに臨むことが大切です。

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